Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀 3

 台湾の人形劇、布袋劇と虚淵玄脚本、そしてニトロプラスのデザインが融合したシリーズの第三シーズン。

 物語の意味というのは見た人間が決める。物語は集団作業で作られるから時として思いがけないものが最後に浮かび上がったりするし脚本家はシナリオのすべてを支配できない。感想とは偶然と無意識と集合意思の産物だ。

 ということでこのシリーズ、様々な人物が登場し各々宿命を抱えており、また立場や事情を持っている人物も多い。能力的に秀でた人物が多いことから、己のあり方に悩むシーンも少なくない。そうした人物たちの、己のあり方の物語ではないかというのが最後に残った感想だった。

 虚淵玄脚本、あるいはアニメで類似シーンを思い出すような場面は多々あるが、虚淵玄脚本作品のFate/Zeroにて印象的なギルガメッシュの台詞に「理想も悲願もないのなら愉悦を望めばい」というものがある。まさしく愉悦のみのために生きているのが凜雪鴉だ。剣豪にも劣らぬ剣の腕を持ち、妖術や偽造といった技術にも長ける天才といっていい人物だが、彼はただプライドの高い悪人を騙して鼻っ柱を折ってやるためだけに生きている。まさしく愉悦のために存在する人物で、作中きっての問題人物でもある。自分の愉悦以外には関心がないため、危うく世界滅亡の原因を作ったときには放置して逃げようとした。

 もうひとりの主人公、殤不患は一振りでも強力な魔剣や神剣を魔剣目録に封印し多数所有している。彼は世界を混乱させる武器を安全に処分する方法を探して旅しているが、当然強大な敵を打ち倒す力にもなり、この第三シーズンではそれが問題になる。不患は一貫して俗世のことに使用することを拒み、過去にも妖荼黎という魔神が復活したときにしか使用しなかった。持てる力を振るおうとしない俗世離れした生き方と情に厚い人物像のバランスが面白い人物でもある。

 第三シーズンの重要人物である萬軍破は西幽の将軍であり国の悪政を憂う憂国の士でありながら、国を守るため禍世螟蝗率いる邪教結社「神蝗盟」に属している。魔族が西幽に大きな災厄をもたらすと知ったときには演説によって敵対する西幽兵と神蝗盟の兵士を共に戦うよう説得するなど将器を持つ人物だ。一方で彼は皇帝を打ち悪政を終わらせるといった野望を持たない。真面目で国を憂い、苦渋の決断で敵対勢力に属する彼は皇帝を疑うといったことができず、世界の真実に気づく可能性を持ちながら気づけずに終わってしまった。

 己の責務にのみ忠実である生き方は確かに兵士を奮起させ、また強敵を倒す機会を作った一方で、真の敵に気づき多くの仲間と共闘する機会を失った。それは、才能と地位を持つ彼にとっては仕方ないで済ますには惜しいものだったのではないだろうか。

 己の使命や責務に生きる人間はときに視野が狭く、野望に生きる者たちは欲に目が眩んで足下を掬われる。愉悦に生きる者は快楽を享受するが、世界に混乱を巻き起こす。かくも人のあり方とは難しいものである。