ぐされ/ずっと真夜中でいいのに。

 

【Amazon.co.jp限定】ぐされ(初回限定LIVE盤)(1CD+BD (STREAMING/DL))(特典:オリジナル8bit(ファミコン風)アレンジCD(2曲入り)付)

 

 

 予約したのを忘れていたけれどライブ映像が見たかったのでよかった。そっちの感想は別記事にて。

 

 本作はミニアルバム「朗らかな皮膚とて不服」の収録曲を含む、ずっと真夜中でいいのに。2枚目のフルアルバム。最初のPVを投稿したのが2018年の6月なので、安定してリリースし続けている。

 全13曲+ライブ版1曲。

1.胸の煙

 イントロもそこそこに44秒でサビに突入する、激しくはないが目まぐるしい展開の一曲目。4つ打ちとピアノ主体のサウンドに甘いメロディーの、今どきのトレンド的でもありつつ不穏さも兼ね備えている。

2.正しくなれない

 YOUTUBEではPV公開済みの曲。夕日のように眩しいサビと影のあるAメロやCメロのコントラストが美しい。「正しくなれない」と強く歌っているけれど、NHKの番組に出演した際に10年後の展望を聞かれACAねが「ずっと真夜中でいいのに。という名前が自分にとってもっと恥ずかしいものであればいい」と語っていたように、陽の当たらないところで存在しようというのはこのバンドの確固たるコンセプトであるらしい。

3.お勉強しといてよ

 ミニアルバムにも収録された今のずとまよの顔のような曲。PVのキャラクター、ニラちゃんもずとまよ。のアイコンになっているし。

 ミュートやカッティング、スラップベースのゴーストノートによるリズムを強調したグルーヴ感強い、ギターの多重録音によるフレーズは歯切れ良いのに厚みのある音とずとまよサウンド全開。(余談だけれど潜潜話のスコアを買った。ギターが5本も存在する曲もあったりして驚きが多い)

4.勘ぐれい

 「伝わらない~」のドランクビートや間奏のスラップなどリズム隊のアイディアが面白いミドルチューン。ずとまよは元々ベースの音がかなり前にくる曲が多いけれど、和声よりリズムが強いことが幅広いメロディを一曲に繋ぎとめている技術のひとつなのかもしれない。

5.はゔぁ

 ボカロ曲のように音を詰め込んだAメロからサビの中でのメロディの移り変わりと歌詞の展開の調和がよい。サビ終わりの「コンクリートの色違いを見つけて はゔぁ」なんて歌詞が抽象的で造語も多いずとまよにしたって大胆だけれど、それだけの勢いがあると同時に、サポートしているプロデューサーやチームが世界観を重要にしているということだろう。(ライブ映像を見ていても思うところ)

6.機械油

 三味線(?)とターンテーブルにラップという変化球。この曲に限らずアルバム2作目にしてサウンドの幅が広い。ラップだと「眩しいDNAだけ」が初期からあったけれど、サウンド面での充実に大きな進化を感じる。

7.暗く黒く

 こちらもPV先行公開済みの曲。しっとり歌い上げるバラード……、と思った?といわんばかりにサビ後に弾けて半分違う曲が始まるもはや恒例の予定調和崩し。どのきょくもうるさくてすきです。

8.MILABO

 「滑らかな皮膚とて不服」収録。さらっと聴ける王道ポップチューンでありつつ冷静になると長いAメロが1回しか出てこないなどずとまよ。節も地味に強い。ストリングスとブラスアレンジがめちゃくちゃいい。

9.ろんりねす

 起伏のおとなしいメロディーと安心感を歌うメロから短調が強く出たメロディーに「褒められるより面白がっていい時間に傷ついてしまおう 受け入れてしまおう」と不安に飛び込むような歌詞で、(他の曲にもそういった歌詞があるが)新しいもの、異なるものに触れていこうという精神性がある。そういった歌詞世界での精神性と違いの大きいメロディーが共存する旋律、新しい楽器を取り入れ違うジャンルの音を取り込む活動の調和がずとまよの音楽体験の優れている点なのではと思う。

10.繰り返す収穫

 このアルバムで一番驚きがあった曲。歌詞とメロディー、展開、それにカントリー的な味付けの調和の相乗効果がとくに好き。歌詞もこれまでの曲とは少し異なっていて、作詞作曲の幅の広さと幅広いサウンドを作れるこのバンドはどこまで行くのだろうと楽しみになる。

11.過眠

 しっとりとした、というより緊張感あるスローテンポな曲。「冴えすぎるままに 不一致が流れてく 所詮は皮膚を 懲らしめ深くまで」というサビの歌詞、「皮膚」というワードが出てくるけれど、ミニアルバム「朗らかな皮膚とて不服」でも同じ単語が用いられている。

 歌詞世界における身体性は、王道のラインとして「心のままに」というようなフィジカルなものから開放された心だけで自由な世界というイメージがあって、対立軸として身体的な音楽というのがあるけれど、ずとまよは明らかに後者に属している。限界を持つフィジカルという存在、我々は肉体に属し、感情だけで構成された限界などない世界などない、それ故に生じる葛藤が歌われている、ように感じる。

12.低血ボルト

 こちらも「朗らかな皮膚とて不服」収録曲。グランドピアノを2台並べてレコーディングしたら2台とも弦が切れたという逸話のあるピアノの強烈なメロディが頭に残る。一度でいいからライブで生ツイングランドピアノで聴いてみたい。最後の不協和音が好き。ごぉーん。

13.奥底に眠るルーツ

 緩いようでちょっと緊張感がある締めの曲。男性が歌えばもっとゆったりしたニュアンスになるのかもしれないが、ACAねの声は緊張感と焦燥が出やすい。

 「僕の奥底に眠るルーツ見せびらかし隊」から始まるが他のパートは日常感が強くその対比の曲なのだけれど、最後のサビで「とことん沈む僕は唯一いつも味方だから 今日で終わらせる」と何も達成しない日常への不満足を歌う。曲の中盤では日常を肯定するような歌詞でありながら終盤は否定する、日常への決別を歌う曲。締めにこの歌詞を持ってきたのは今後への決意だろうか。