鬼滅の刃 23・外伝

鬼滅の刃 23 (ジャンプコミックスDIGITAL)

 

鬼滅の刃 23 (ジャンプコミックスDIGITAL)

鬼滅の刃 23 (ジャンプコミックスDIGITAL)

 

 

 23巻にて完結。

 鬼滅についてはほとんど語られ尽くしていて、個人的にも一通りは考察してみたかなというところ。

 こと主人公たちに関しては十二分に語られているので、鬼舞辻無惨様にちょっと注目しようかと思う。

 「鬼滅は敵にも救いがある」というのはときどきいわれているけれど、これはやや誇大広告気味で、一部の敵キャラクターの救済が印象に残ったためだろう。こと敵の首魁である無惨には何の救済もない。彼は呪詛を吐きながら落ちていった。

 鬼舞辻無惨はどうして巨悪たり得たのだろうか。自身が「死のイメージが張り付いていた」と語る出生は、母親の胎内で何度も心臓が止まり生まれたときには死産で、荼毘に付される直前に産声をあげたという壮絶なものだ。

 彼の生に対する執着を感じるような出生で、彼に瑕疵はないが既に自分の命に執着する鬼と目的のためなら自らの命をなげうつ鬼殺隊と対比がなされている。次のターニングポイントは善良な医者だ。自分を治療してくれた医者を、治療の途中で殺したことで太陽の元に出られない鬼という立場になってしまった。

 短慮と癇癪は彼の致命的なまでの欠点だ。だがより重要な欠点は自分の命を重んじる反面、それ以外のものに対する関心が欠落している点だ。そもそも鬼殺隊を本気で危険視しているのならもっと武術に秀でた者を鬼にすればよかったし、自分の生に執着するなら継国縁壱の再来を警戒して技を磨けばよかった。無意味に下弦を全滅させずとも、組織を構築して鬼の軍勢を築いていれば敗北することもなかった。

 間接的に必要なものに関心を持ち、時間をかけて積み上げることができない。それが無惨の悪であり敗因でもあった。

 不老不死を望むことは、それ自体は悪ではない。生きたいと願うことも、そのために行動することも、手段を選べば悪ではないだろう。無惨は手段を選ばなかったというより、関心を持てなかったために選びようがなかった。

 何が善で何が悪か、個々の定義は時代によって変化するが、もっと明快な定義が存在する。多くの人が続いてほしいと願い、そのために実行されたものが善で、またそこに汲み取られようのないものが悪なのだ。